皆さん、森見登美彦という名の小説家をご存知でしょうか?若い世代を中心に人気を誇るこの小説家の魅力は、なんといっても、摩訶不思議で捉えどころのない世界観です。そして、それにスパイスを利かせるように登場人物一人一人にクセがあり、強いインパクトを持っているんです。映像化もされている彼の作品は一度はまると抜け出せない沼のような底の深さがあるんです。今回はそんな彼の作品の魅力を語りたいと思います。

作家「森見登美彦」とは?

 森見登美彦氏は奈良県出身の小説家であり、京都大学在学中に執筆した「太陽の塔」で第15回日本ファンタジーノベル大賞を受賞し、デビューしました。しばらくは国会図書館職員との兼業作家として働いていましたが、現在では専業作家として活躍しています。「夜は短し歩けよ乙女」や「熱帯」で直木賞候補に選ばれるほど、その作品性の高さは高い評価を受けている作家さんなんです。

摩訶不思議で「珍妙」な世界

 森見登美彦を語るうえで欠かせないのが、彼にしか表現できないであろう「珍妙」な世界観です。奇妙な言い回し、現実では起こりえない現象、意味不明なキャラクターがあたかも現実世界に実在するかのように展開していきます。でも、こんな世界だったら楽しいかもな、なんて思わせてしまう、絶妙なバランス感覚で現実とファンタジーの境界を曖昧にしてしまうのが森見氏の作家性と言えます。

舞台はたいてい京都

 本人が京大出身ということもあってか、不思議な出来事が起こりそうな土地柄だからか、森見氏の作品はその多くが京都を舞台にしています。実際の地名や寺社仏閣が出てくることも多く、京都が好きな方にとってはうれしい作りともいえます。読むとなんだか京都に行きたくなってくるんですよね。

森見登美彦の代表作、オススメランキング

1位:夜は短し歩けよ乙女

 大学の先輩と後輩である「黒髪の乙女」の恋を描いた作品。乙女の気を引くために古本市や文化祭など学生生活のあらゆるイベントのたびに偶然を装って会いに行き、乙女の目にとまろうとする先輩と面白いことに全力前進な乙女との恋愛は不思議なんだけれど、確かに青春を感じさせます。アニメ化もされているこの作品は、本だけでなくアニメも見ることをぜひオススメします。むしろアニメから入ってほしいとすら言えます。それくらい不思議で愉快な世界をうまくまとめてあるので、一見の価値ありです。

2位:四畳半神話大系

 大学生の男が小津という奇妙な学友とともに過ごした学生生活のあらゆる「もしあの時こうしていたら」の可能性を描いた作品。どのサークルを選んでいたらどうなっていたのか、その分岐を描いています。誰でも「もしこうしていたら」と思うことはあるでしょう。そんな可能性の先を描いた作品はとても興味深く、また夜は短し歩けよ乙女との共通性も垣間見えて面白いです。こちらもアニメ化しており、とてもよくできたアニメになっているので、一緒に見ることをオススメします。小津がとにかく「珍妙」で惹かれてしまいます。

3位:有頂天家族

 かつての威光を取り戻すべく奮闘する狸の一家を描いた物語。ファンタジー色が強めの作品なので、ファンタジー好きの人に強くオススメできます。テンポよく進む物語と様々なキャラクターたちが飽きの来ない楽しさを提供してくれます。こちらもまたアニメ化、漫画化されていて、そちらの方で知っている人も多いかもしれません。

4位:新釈 走れメロス

 走れメロスや山月記など文学界の名作を森見氏が独自の世界観で新たに描いた作品集。誰もが知っている作品をこの人が書いたらどうなるのかって、結構気になりますよね。先達へのリスペクトは残しつつ、森見氏らしい「珍妙」で笑える新しい作品になっているので、元の作品を知っている方たちはもちろん、知らない人にも薦めたいエンタメ短編集です。

ホラーなど、まだまだ尽きない魅力的な世界

 今回紹介したのは京都が舞台の青春色強めの作品でしたが、他にもホラーなども書いていたり、アンソロジー作品に参加していたりするので興味のある方はぜひ調べて読んでみてください。